盲導犬候補の子犬のおでかけと留守番の様子
旅行に盲導犬候補の子犬は生後約2か月から1歳になるまで、パピーウォーカーと呼ばれる飼育ボランティアの家庭で生活します。
その10ヶ月間の中で、お出かけや留守番をしないといけない時、さらにパピーウォーカーが犬を連れていけない旅行に出かける時は、以下のような対応をとります。
盲導犬候補の子犬と一緒におでかけすることは、将来盲導犬として活躍するために必要なことです。
どうしても一緒に出かけられない場合は留守番をさせるなどの対応策も可能です。
現役パピーウォーカーの筆者が体験も交えながらお話します。
目次
子犬とのおでかけ
盲導犬候補の子犬にとって、おでかけは社会化を進める上でもとても勉強になります。
パピーウォーカーと一緒にでかけられるところはどんどん一緒にでかけています。
車でおでかけ
将来盲導犬として活動する時に乗り物に乗るということが想定されます。
電車やバス、時には飛行機に乗ってユーザーと移動します。
盲導犬候補の子犬は訓練前ですので公共交通機関を利用することはできませんが、自家用車で乗り物に乗る練習をしています。
訓練施設でのレクチャーに行く時や歩行会に参加するときはもちろん、何もなくても車で出かけて新しい街を散歩したり、日常の家族の送迎などにも一緒に車に乗せてドライブに慣れさせています。
運転している時にとなりの助手席下に子犬がいないと変に思うようになるほど一緒にいます。
車で出かける時、いつも家族の誰かが一緒にいてくれるといいのですが、そうはいきません。
運転する私と子犬の二人で出かけないといけないことも多々あります。
はじめは緊張しました。正確には新しく子犬を迎える度に緊張します。
委託直後の子犬はたった生後2ヶ月なのです。助手席下でゴソゴソ、で済めばいいのですが暴れだしたらどうしよう!と。
助手席の下にあるバーにリードで短く繋いて乗せています。
車で出かける直前に食事はとらせない
車で出かける直前に食事をとらせると、犬も気持ち悪くなるようです。車酔いする犬もいます。
長い外出で、途中で子犬に食事をとらせる必要がある時も、食事を取ったあとはしばらく休ませてから出発するようにしています。
安全運転を心がける
子犬が乗っていなくても当然なのですが、安全運転を心がけています。特に、急ブレーキにならないように注意しています。
子犬に車は怖いものではないと分かってもらわなければなりません。
車は盲導犬になる子犬にとってはじめての乗り物なのですから。
車の中は静かにする
子犬が車の中でリラックスできるように、車内は大きな音で音楽をかけたりせず、静かにしています。
足元の子犬のスペースにはバスタオルか毛布を敷いて寝やすい環境を作っています。
安全で楽しいドライブ
実際にこの方法で車を走らせてみると、助手席足元のスペースは安全に思えます。
すぐに大きくなる子犬は丸まって足元に伏せています。しばらく走ると必ず寝てしまいます。
また運転席のすぐ横なので子犬の様子を確認しやすいのも良い点です。
この乗せ方は盲導犬候補の子犬でなくてもおすすめです。
私の家から訓練施設までは1時間半ほどかかるので、月齢が小さいうちは連れて行くとき緊張するのですが、近いところで練習をしてもう大丈夫だなとわかるともう、1時間半でも2時間でも、遠いところへの旅行へも楽しんで一緒に行けるようになるのです。
そのうち、子犬に「車ででかけるよ!」と声をかけると自分で車のドアの前へ行き、自ら乗って、助手席の足元に座ります。その前に排泄場所へ自ら行って排泄を済ませることも忘れません!
※また一般的な車でお出かけが大丈夫になるのは、下記ページに詳しく掲載しています。
→苦手な犬が車に乗っても大丈夫になるには?
旅行にでかける
盲導犬候補の犬にとって旅行に出かけて、家とは違う場所で過ごしたり、泊まったりすることも勉強になります。
将来盲導犬になってユーザーと宿泊を伴う仕事があるかもしれませんし、何よりどこでも落ち着いて過ごせるようになるためには色々な経験が必要なのです。
私も子犬を連れて旅行に出かけることがあります。家族のワクワクが伝わるのか、「いつもと違うの?」と言いたげに車に乗り込む子犬が印象的です。
車で遠出することになっても高速道路のサービスエリアにドッグランが併設されているところを利用して、時々子犬をリフレッシュさせたり、排泄させたりしながら旅を進めることができます。出発前に調べておくと便利です。
旅行は子犬と10ヶ月間しか過ごすことのできないパピーウォーカーにとって大きな思い出になるのはもちろんのこと、子犬にとっても自信につながる良い体験だと感じています。
旅行をする際に知っておきたい最低限の情報についてはこちらに詳しく掲載しています。
→旅行時に愛犬と一緒に楽しむために
レストランにでかける
将来盲導犬になったらユーザーと共にレストランに行くことがあると考えられます。
まだまだ受け入れ拒否のある現実
認定NPO法人全国盲導犬施設連合会に加盟している盲導犬育成8団体のユーザーを対象に行ったアンケート調査によると、2019年1月からの一年間で公的施設や不特定多数の人が利用する施設で盲導犬同伴での受け入れ拒否を経験した人は52%に及びました。
まだまだ盲導犬の受け入れが一般的ではない実状が浮かんでくる結果です。
補助犬が普通に受け入れられる世の中を目指して(筆者の体験)
私達パピーウォーカーも、盲導犬をはじめとする補助犬が普通に社会に受け入れられる社会を目指す観点から、また子犬の社会化の観点からも、事前に盲導犬候補の子犬を同伴しても良いか問い合わせて、許可が得られた場合にはペットの犬が入らない場所へ連れて行くことがあります。
実際活動している補助犬を目にしたことのある人はどのくらいおられるのでしょうか?私は会ったことがありませんでした。
盲導犬候補の子犬も訓練中であることを示しながらどんどん歩くことで目にする人が増え、社会にとって補助犬のいる風景が普通になればいいなと思います。
連れて行くところは、鉄道の駅、市役所、郵便局、銀行、ショッピングモールなどからはじめます。盲導犬協会のスタッフと一緒に行くこともあります。
レストランはテラス席のあるところを中心に盲導犬候補の子犬を同伴させてもらえないか尋ねることがあります。
はじめての補助犬ということで、こちらも緊張しましたし、店側も構えておられたように感じました。
食事の間、外のテラス席のテーブルの下で子犬はとてもおとなしく過ごしてくれてホッとしたのを思いだします。
帰り際、お店の方に「とても良い子ですね。」と言われたときはとても嬉しかったです。
子犬を連れて行くときには子犬の毛が落ちないよう、服を着用させ、私自身の服装も犬の毛が付きにくいものを選んでいます。
パピーを連れていけない時
盲導犬候補の子犬であっても連れていけないところはたくさんあります。
一緒に行けない時には留守番をさせます。
家で留守番
日々の買い物をはじめ、子犬を連れていけない所へ出かける時は家で待たせます。留守番させる時はケージの中に入れます。
私が盲導犬協会から借りているケージの大きさは60㎝×90㎝×67㎝です。子犬が大きくなっても身動きとれる大きさです。
このケージは色々な場面で使っています。
夜寝る時にも使っているので、ここに入るととてもリラックスして昼間も寝ることが多いです。
また月齢が低くて目が離せない時期も家事をする時などにケージに入れておくと安全です。
ケージは人の気配の感じられるところに置いて子犬につきっきりになれなくても子犬の様子が見られるようにしています。
興奮しすぎた時もケージにいれると落ち着きますし、食事もケージで与えます。
ケージは居心地のよい自分だけの場所なのです。
そのケージで留守番させます。ケージには子犬にとって危険なものがないのでこちらも安心して出かけられます。
はじめは10分位で短い時間から留守番を始めます。パピーウォーカーがでかけてひとりになっても必ず帰ってくるという経験を積み重ねることで、だんだん長い時間も安心して待てるようになります。
長期で留守にするとき
子犬を待たせることができない位、長時間の外出や、冠婚葬祭をはじめ、子犬を連れていけない時、さらに宿泊を伴う時には子犬を預かりボランティア宅に預けます。
私がパピーウォーカーをしている盲導犬協会の場合、パピーウォーカーが預かってほしい日にちを盲導犬協会に連絡して、盲導犬協会の方で、預かりボランティアを決めて連絡してもらうという流れになっています。
登録されている預かりボランティアの中で家が比較的近いところを中心に決めてくださっています。
子犬を預けるのは申し訳ないような気になることもありますが、他の家で過ごすことは盲導犬候補の子犬にとって新しい環境で過ごす勉強にもなりますし、預かりボランティアも今はパピーウォーカーはできないけれど、一時預かりなら可能というお宅がほとんどなので、喜んで預かってくださいます。
パピーウォーカーも子犬が預かりボランティアのお宅でかわいがってもらっていると思うと安心して用を済ませることができます。
盲導犬の留守番はこちらに掲載しています。↓
留守番とお出かけについてまとめ
盲導犬候補の子犬にとって、おでかけも留守番も預かりボランティアの家での滞在も有意義な体験です。
人の中で生活していく中で想定される場面を子犬のうちからどんどん体験してなにごとにも動じない犬へ成長していくのです。