盲導犬候補の子犬と暮らし始める時
盲導犬候補の子犬を生後約2ヶ月から1歳になるまで育てるパピーウォーカーになって、実際に子犬と暮らしはじめるにあたって準備や心構えが必要になります。
これから盲導犬候補の子犬との楽しく暮らすためにも、さまざまな準備を滞りなく行っておきたいですね。
子犬の委託直前・直後の様子を現役パピーウォーカーの筆者がお話しします。
子犬を迎える準備
盲導犬協会から子犬の委託連絡があったら、子犬との暮らしに向けての具体的な準備がはじまります。
子犬の名前を考える
パピーウォーカーのはじめの仕事は子犬の名前を考えることです。
この仕事は毎回ワクワクすると同時に頭を悩ませるものでもあります。
盲導犬候補の子犬は一緒に産まれた兄弟に同じアルファベットを頭文字にした名前をつけることになっています。
兄弟をA胎、B胎、C胎というようにアルファベットで管理しているのです。
例えば、「A胎の注射接種日は◯月◯日です。」と連絡があればA胎の兄弟はみんなその日に訓練施設に集まって注射をしてもらう、というような感じで、兄弟はアルファベットの頭文字でまとめて呼ばれます。
また、盲導犬候補の子犬はやがてパピーウォーカーのもとを離れ、訓練の後盲導犬ユーザーと暮らします。
盲導犬ユーザーにもいい名前、この犬にピッタリだなと思ってもらえるような名前をつけようと考えているので、悩みに悩んで名前を提出しています。
子犬は選べる?
私がパピーウォーカーをしている盲導犬協会では子犬を選ぶことはできません。
雄がいいとか雌がいいとか、犬種はラブラドールレトリバーがいいとかゴールデンレトリバーがいいとか、黒がいいとかイエローがいいとか、それも希望を言うことはできません。
このあたりは盲導犬協会によって違いがあるかもしれません。
もし、希望を言うことができたら・・・と考えると、とても迷ってしまいます。
これまで私は3頭の子犬と暮らしました。犬種も色も様々です。性格もそれぞれ違います。
でも言えること。どの子もかわいいです。縁におまかせして、その時その時で違った子犬を家族に迎える。それもパピーウォーカーの醍醐味だと思います。
子犬のために必要なものの準備
実際に子犬と暮らすために必要なものがいくつかあります。
それらは全て盲導犬協会から貸してもらいます。パピーウォーカーは何もなくてもはじめることができます。
フード(餌)
フードについても盲導犬協会指定のものを盲導犬協会から持ち帰ります。
もしそのフードが合わないなどの場合も盲導犬協会の獣医の指導のもと変更します。
体調管理・薬
必要な薬は盲導犬協会の獣医から処方されます。
何か体調に不調があった場合も原則として盲導犬協会の獣医に診てもらいます。
子犬と暮らすためにパピーウォーカーが準備すること
盲導犬候補の子犬と暮らす前にパピーウォーカーが準備しておかなければいけないのが、保険と育成費用です。
保険
ボランティア保険に加入します。万一に備えて散歩にでかける可能性のある家族全員が加入するようにしています。(盲導犬協会を通じて加入しています。)
費用
子犬の育成にかかる費用の一部をパピーウォーカーが負担することになっています。
各盲導犬協会によって負担額や仕組みは違いがあるようですが、私の場合は月5000円を盲導犬協会に納めています。
この金額は子犬の1ヶ月のフード代に満たないと思います。その他の負担としては訓練施設までの交通費位(ガソリン代)です。
→基本的なパピーウォーカーになるための情報はこちらに掲載しています。
委託前講習(筆者の体験)
いよいよ子犬の委託日が近づくと、主に新規のパピーウォーカーに向けて講習会がありました。
子犬を家に連れて帰ったらまず、どうしたらいいか、フードの与え方、散歩の仕方、トイレトレーニング、お手入れなど、2時間ほどかけての講習でした。
実際に出席してみて、はじめて自分に子どもを授かった時に出かけた自治体の母親教室を思い出しました。命を預かる心構えができる講習でした。
子犬の委託
いよいよ子犬の委託の日。訓練施設へ迎えに行きます。
委託式
繁殖犬ボランティアの元で生後約2ヶ月まで育てられた子犬たちは、この日からそれぞれのパピーウォーカーの家へ委託されます。
パピーウォーカーにとってかわいい子犬たちとの対面はワクワクドキドキ。この日から子犬にとってもパピーウォーカーにとっても新しい暮らしがはじまります。
この日は今食べているフードの量やこれからのフードの増やし方、今の体重や健康状態など細かい説明を受けて帰路につきます。
委託式へ行くときの注意点
委託式へ行くときにはいくつか注意点があります。
2人以上で行く
委託式へ行く時はできれば2人以上で行くことが望ましいです。なぜなら帰りは子犬がいるからです。
なので、この時から助手席の足元に座らせて、助手席で様子を見ていてくれる人がいたほうがいいです。
もし一人で行く場合は事前に申し出てバリケンを借りる方が運転して帰るのに安心そして安全です。
バスタオルか毛布を持って行く
子犬を助手席の足元に乗せる時に、一枚バスタオルか寒い時期なら毛布を敷くのがおすすめです。
柔らかい触感に子犬は安心してくれます。そして車に子犬の抜け毛が付くのを防ぐ役割も果たします。
委託直後の子犬の様子
生後約2ヶ月。母犬や兄弟犬と離れてパピーウォーカーの元にやってきた子犬はどんな様子なのでしょうか。
大きさ
体重は個体差がありますが5〜6キロ程度です。抱っこできます。
大型犬を抱っこできる時間は本当に短いのです。思う存分抱っこしましょう。
様子
食べて、おしっこしてうんちしてちょっと遊んで眠る。その繰り返しです。とにかく目が離せません。
注意することは以下のとおりです
誤飲を防ぐ
子犬は好奇心旺盛です。遊んでいると思ったら、何かを咥えようとしたり、かじろうとしたり。
でも、誤飲はなんとしても防がなければなりません。
排泄の失敗に対応できる状態にしておく
排泄の回数も多く、この時期はまだいつどこで出るかわかりません。
排泄の失敗に対応できるように、掃除道具を用意しておくと同時に、汚されても困ることのない環境作りが大切です。
床に敷くものも洗いやすいものにしておくとストレスが軽減されます。
なるべく叱らないですむ環境を作る
子犬はなるべく叱らないで育てたいと考えています。
なので、子犬が立ち入ったら困るところには予め入れないようにしておくなど、こちらで予防策を取っておくことようにしましょう。
子犬の安心できる場所を用意する
子犬が安心できる場所としてのケージを用意します。ケージはリビングなど家族が集まる場所に置いて、子犬からも家族の様子がわかり、こちらからも子犬が見えるようにします。
家事をする時や子犬が寝る時など、子犬から目を離す時にはケージの中に入れて、子犬がリラックスしながら安全に過ごせる場所を確保します。
覚悟する
生後2ヶ月頃の子犬は人間の赤ちゃんと同じです。夜も2〜3時間おきに目を覚ますのが普通です。
身体が小さくおしっこもまだ身体にたくさん溜められないので、夜も起きたタイミングで排泄場所へ連れて行きます。
私のところに来てくれた子犬は夜中に起きておしっこした後、とにかくハイテンションになってなかなか寝付いてくれませんでした。「お願い寝てー。お母さん眠い。」と何回子犬にお願いしたかわかりません。
このような毎日の中でかけがえのない家族になっていくのです。
盲導犬候補の子犬と暮らし始める時まとめ
子犬との暮らしはちょっとしたドラマの連続です。
一筋縄ではいきません。でもそれが楽しい。ますます子犬が可愛く見え、大好きになります。
排泄物の掃除をしたり、寝不足だったり。こんなに大変なのはいつまで??と思ってもずっとではありません。
振り返れば少しの時間です。手をかけた分、子犬もあなたのことを大好きになって慕ってくれるようになるのです。