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盲導犬候補の子犬の暮らし

コラム
この記事は約 14 分で読めます。

盲導犬候補の子犬は生後約2ヶ月から1歳になるまでパピーウォーカーと呼ばれる飼育ボランティアの家庭で育てられます。

パピーウォーカーの家で子犬たちは、以下のように一日を過ごしています。

盲導犬候補の子犬の暮らしについて
生後2ヶ月から6ヶ月は食事や排泄の回数が多い
生後6ヶ月以降は食事や排泄の回数が落ち着いてくる
トイレトレーニングでさせたいタイミングで排泄を覚えさせる
食事は盲導犬協会指定のものを与えておやつはあげない
散歩は盲導犬として活躍するために必要な勉強でもある

このように、日々の暮らしでさまざまな経験をさせて、将来は人間のサポート役として活躍できるように子犬のうちにサポートしてあげるのがパピーウォーカーの役割でもあります。

今回は、子犬のトイレトレーニングや食事、散歩についても現役パピーウォーカーの筆者がお話しします。
 

子犬の一日の流れ

子犬はおよそ生後2ヶ月でパピーウォーカーのもとに委託されます。

犬種はラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバーとゴールデンレトリバーのミックスであることがほとんどで、大型犬の子犬です。
 

生後2ヶ月ごろの子犬の一日

生後2ヶ月頃の体重は5〜6キロ位。人間でいうと3〜4歳に相当するそうです。

訓練に入る1歳になる頃には体重25キロ前後になり、人間に置き換えると18歳位に成長します。ですので、子犬の一日の流れといっても成長過程でどんどん変化していきます

私は子犬の健康管理のためにも日々の様子をノートにつけています。まず、生後2ヶ月委託後すぐの子犬のある日の記録は以下の通りです。

3:30 おしっこ
5:30 おしっこ
6:00 食事 飲水
6:10 うんち
8:05 おしっこ
8:10 散歩(おしっこ うんち)
9:00 帰宅 飲水
9:10 おしっこ 遊び
10:10 寝る
12:20 起きる おしっこ 遊び
13:00 食事 飲水
13:10 おしっこ 遊び 
14:00 おしっこ うんち
14:20 寝る
16:30 起きる おしっこ 飲水
16:40 散歩(おしっこ うんち)
17:10 帰宅 飲水
17:30 寝る
20:10 起きる おしっこ
20:30 食事 飲水
21:00 おしっこ うんち
21:15 寝る
23:30 おしっこ   

この時期は排泄の回数も多く、散歩でもしてしまいます。食事は1日3回与えています。
 

生後6が月頃の子犬の一日

大きくなるにつれて、排泄の回数も減り、生後6ヶ月からは食事も1日2回になります。
生後6ヶ月ごろからの生活記録はこうなります。

6:30 起床 おしっこ
6:35 食事
6:40 うんち 飲水
8:00 おしっこ うんち
8:10 散歩
9:30 帰宅 飲水
13:00 おしっこ
16:30 おしっこ うんち
16:40 散歩
18:00 帰宅 飲水
18:10 食事
22:00 おしっこ

一日の流れが安定してくると毎日記録を取るのは終わりにして、体調を崩した時だけの記録に切り替えています。

起きている時間のひとり遊びも、家の中のお気に入りの場所でのうたた寝も上手になります。子犬の言いたいこともわかるし、子犬も私の言いたいことをわかってくれています。

これは何も予定がない日の一日で、子犬との日々は主にレクチャーを受けに訓練施設に行ったり、パピー担当者の家庭訪問があったり、パピーウォーカー仲間で誘い合って歩行会を行ったりしています。

子犬と二人でも色々な社会経験が積めるように、積極的に車に乗って出かけて初めての場所を歩いたり、時には繁華街を歩いたりしています。
 

子犬のトイレトレーニング

盲導犬候補の子犬であっても、そうでなくても子犬を家に迎えたらまず教えたいのがトイレです。

迎えてすぐは子犬も排泄場所がわからず、また回数も多いのでどこでもしてしまいます。

でも犬は本来きれい好き。自分の周りを汚したくないと考えるようです。教えるときちんと排泄できるようになります。
 

排泄場所

排泄場所として、我が家は庭に出てすぐのコンクリートの部分を使っています。
犬は排泄する前に地面を匂いながらくるくる回ったりするので、犬が回れる程度の広さに仕切って排泄場所にしています。

仕切りがあまり広すぎると、他に気が散ってしまうようなので、回れるくらいの広さがちょうど良いように感じています。

ただし、あまり狭すぎると、出たうんちを犬が足で踏んでしまうという惨事が起こります。失敗も経験しながら広さを最終決定する必要があります。
 

トイレトレーニングのポイント

トイレトレーニングのポイントは以下の通りです。

子犬が排泄しそうなタイミングで、先に排泄場所に連れていく
タイミングが合って、たまたまであっても、排泄場所でできたら褒める
排泄の時にワン・ツー、ワン・ツーと声掛けする
失敗しても怒らない
自分から排泄場所に行ってできたらとても褒める
子犬が排泄場所に行きたいと起こしている行動を見落とさない
 

子犬が排泄しそうなタイミングで、先に排泄場所に連れていく

まず、子犬が起きた時、食事の前後、前のおしっこから時間が開いてるなーと思ったときなど、とにかくはじめは頻繁に排泄場所に連れていきます。

そのうちの何回かはたまたまタイミングが合ったという理由でおしっこがでます。それをとても褒める。おおげさなくらい褒める。これがポイントです。

大好きな人から褒められる!これが嬉しくて子犬はここで排泄できるようになるのです。
 

排泄の時にワン・ツー、ワン・ツーと声掛けする

排泄の時に、ワン・ツー、ワン・ツーと声掛けする。これは盲導犬協会の子犬委託前の講習で習ったことです。

ワンはおしっこ、ツーはうんちのことを指します。子犬を排泄場所に連れて行ったら、ワン・ツー、ワン・ツーと掛け声をかける。

排泄している最中にも掛け声をかける。そうすることでパブロフの犬のように後々ワン・ツーの号令で今、排泄するのだなと子犬がわかって、こちらのさせたいタイミングで排泄できるようになります。

盲導犬となって人間社会で暮らしていくにあたり、させたいタイミングで排泄できることはとても大切です。

家庭で暮らす犬でも同じで、このしつけでできていると人にとっても犬にとっても暮らしやすいと感じています。

たとえ子犬であってもこの声掛けによる条件反射を習得した後は、信頼関係が全然違います。

車で出かけた先でも、友人宅などにおじゃまする場合でも、タイミングを見計らって外へ連れ出し、声掛けで排泄を済ませることができます。どこに連れて行ってもこの子は大丈夫という大きな自信になるのです。

また留守にしなければならない時も、事前に声掛けで排泄を済ませさせておけば、安心です。
 

失敗しても怒らない

もうひとつトイレトーニングをするにあたって大切なことは、失敗があっても怒らないということです。

小さいうちは特に、目を離したすきにどこかでしてしまったり、排泄場所に連れて行ってもしなかったのに、部屋に戻ってきたらすぐ排泄する、ということがあります。でもそれは黙って片付けましょう

もし、人が子犬の排泄場所でないところでの排泄について怒ったとしても、子犬は排泄そのものがいけないのだと考えてしまい、おしっこやうんちを我慢してしまうようになるおそれがあるからです。

はじめのうちは黙って片付けて、子犬も排泄場所をわかるようになっているのに、違うところで出てしまったというような場合は子犬の方から申し訳なさそうな態度をとるようになりますよ。

その時は「仕方なかったね。汚れちゃったね。」と話すくらいで、子犬はもう十分わかっています。
 

自分から排泄場所に行ってできたらとても褒める

そのうちに子犬は自分から排泄場所に行こうとし始めます。

私の家の場合は窓の外なので、窓のところに行って私の方を見ます。「この窓を開けて。」と言わんばかりに。

開けてあげて排泄場所に行き、自らできた時は感動です!とてもとても、これ以上ないくらい褒めてあげましょう
 

子犬が排泄場所に行きたいと起こしている行動を見落とさない

窓のところに行っているのに見逃して、窓の近くで排泄してしまったことが何度かあります。
せっかく行こうとしていたのに、サインを私が見逃してしまって申し訳ない気持ちになります。

サインを出し始める頃の子犬は我慢がきかないことも多いので教えてくれたらすぐに連れて行くことが大切です。そして、できたら褒める。この繰り返しです。

少し時間のかかる子犬もいるかもしれませんが、これも絆を深めるひとつとしておおらかに受け止め、子犬に付き合ってあげてください。
 

子犬の食事

子犬の食事は盲導犬協会指定のものを与えます。与える量も委託の時にこれまで繁殖犬ボランティアのところで食べていた量や子犬の体重をみて決められます。

その後、盲導犬協会の指示のもと成長に伴って量を少しずつ増やしていきます。生後6ヶ月までは1日3回、6ヶ月を過ぎると1日2回与えています。

盲導犬候補の子犬に食事を与えるにあたっていくつか注意点があります。

食事の時間が決まってしまわないようにする
おやつは与えない
子犬とアイコンタクトをとって合図してから食事をとらせる
水も一緒に与える
 

食事の時間が決まってしまわないようにする

食事の時間は毎日何時とは決めてしまわないようにします。
とはいっても生後6ヶ月までは1日3回、それをすぎると2回与えますのでだいたい朝昼夜、とか朝夕にはなります。

盲導犬になってユーザーと出かけた先などで、自分の食事の時間だとソワソワしてしまわないためだそうです。

では実際に子犬の時期に食事の時間を決めてしまわないようにどうしているか、なのですが、私の場合はその日の予定に合わせてわざと与える時間を変えています。

▼1日3回与える時期の場合
①朝6時、昼13時、夜21時
②朝9時、昼16時、夜23時

のようなパターンです。

朝起きたらすぐに食事を与える日と、先に散歩に出かけてから食事を与える日のように変えてみたり、昼間一緒にでかける時も長くなりそうな日は昼食を持参し、出先で食べさせることもありますし、夕方帰れそうなら朝食を遅めにして帰宅してから昼食、夜は遅く与えるというペースにしています。

月齢の低い子犬は消化器官がまだ弱かったりするので、食事と食事の間隔をしっかりと開けたほうが良いようです。
8時間ごとというわけにはいきませんが、6時間はあけておくほうが下痢をしにくいように感じています。
 

おやつは与えない

おやつは体重管理の観点から、またおやつにつられて人の言うことを聞くというようなことのないように与えません。

おやつを与えなくても、褒めてあげることや身体を撫ぜてあげることで喜んでくれますし、コミュニケーションも十分にとれます。
 

子犬とアイコンタクトをとって合図してから食事をとらせる

食事はケージでとらせています。食事の手順は以下の通りです。

食器に食事の準備ができたらまず、子犬をケージに入れる
「シット」の掛け声で子犬を座らせて、食器を子犬の前に置く
子犬と目を合わせて「ステイ」と声をかけ、少し待たせる
子犬とのアイコンタクトがしっかり確認できたら「オーケー」と声掛けして食べさせる
 

子犬との生活の上でアイコンタクトはとても重要ですが、まず食事の時にこのアイコンタクトをマスターできるようにしつけます。これはコマンドを聞けるようになる第一歩です。
 

水も一緒に与える

小さい間はドッグフードを水でふやかして与えることもあります。また、ガツガツと速く食べてしまう場合などは喉につまらせてしまうことがないように水と一緒に与えます。

食事と一緒に水を与えたり、食後に水を与えることは歯に餌の汚れがついてしまうのを防ぐ役割も果たします。
 

子犬の散歩

盲導犬候補の子犬にとって散歩は勉強です。

まずは家の周りからはじめて、静かなところも賑やかなところも経験しながらどんな環境でも落ち着いてすごすことができるように散歩を通して社会化を進めます。
 

委託直後の子犬の散歩

委託直後、生後約2ヶ月の子犬はまだワクチンが3回終わっていません。ですが、次のことに注意しながら毎日外の世界を体験させます。

他の犬など動物とは接触を避ける
草むらや空き地、公園の中は避ける
 

道の真ん中を歩いて、道に落ちているものを拾って食べてしまうことのないように気をつけます。

外の空気を吸って、新しい景色を見るだけでも勉強になります。パピーウォーカーが一緒に楽しみながら少しずつ世界を広げていってあげるのです。
 

散歩するときの注意

ワクチンも終わり、歩行に慣れてきたらどんどん外の世界を体験させます。ペットとして飼われている犬と散歩の仕方に少し違いがあります。

排泄を済ませてから散歩に出かける
臭い取りはしない
他の犬とのすれ違い方を学ぶ
猫や鳥など他の動物に気を取られないように歩行する
 

排泄を済ませてから散歩に出かける

将来盲導犬として活動するときに、外で排泄をしてしまわないように、子犬のうちから排泄を済ませてから散歩に出かけることを習慣づけます。

散歩に出かける前にいつもの排泄場所でワン・ツーの掛け声で排泄を促してから出かけたり、排泄が終わったタイミングで散歩にでかけたりしています。

散歩中に排泄させないことは、パピーウォーカーをしていて、完全に徹底するのは正直難しいです。でも必ず排泄を済ませてから出かけるようにしています。
 

臭い取りはしない

またこれも将来盲導犬として活動するときにまっすぐ前を向いて歩けるように小さいうちから臭い取りはさせないようにしながら散歩します。

盲導犬候補の子犬として誇りをもって前を向き、人の半歩前を歩けるように心がけています。

時々、お店の前などに大きな置物が置いてあったりして「何これ?」というような目でこちらを見ることがあります。

そういうときは一緒に近づいて私が触って見せて、「怖くないよ。」と話したり、どこからか水の流れる音がしたら、「ここからだよ。」とその仕組みを見せたりして、子犬の興味から安心へと導くようにしています。
 

他の犬とのすれ違い方を学ぶ

もう一つ盲導犬の候補の子犬として学ばなければならないことは、「急発進をさせない」ということです。

盲導犬として歩いているときに落ち着きをなくし、急発進してしまうようなことがあっては困ります。

そのため、散歩中に他の犬と出会っても冷静にすれ違えるよう注意したり、猫や鳥などを見つけても追いかけたりしないように、子犬のうちから声掛けをしながら、落ち着いて歩けるようにがんばっています。

実際に散歩してみると猫や鳥など動物の他にも落ち葉なども強敵です。風で舞って、子犬の気を惹きます。

散歩を通して暮らしの中に満ちている音や様々なシチュエーションと出会いながら、どんなところでもいつも通りそして自信をもって歩けるようにサポートしていきます。
 

まとめ

盲導犬になったらユーザーの外出を手助けするだけでなく、ユーザーに大きな安心感を与える存在になってほしいと願います。

そのため、子犬のうちにできるだけ多くの経験をさせて、大丈夫だと思えることを増やしたいと考えています。

パピーウォーカーは子犬を様々な面でサポートしながら将来、人をサポートできる存在へと育てていく第一歩を担っているのです。

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浅野桃(盲導犬パピーウォーカー)

浅野桃(盲導犬パピーウォーカー)

幼い頃から犬や猫、うさぎ、リスなど動物がそばにいるのが当たり前の環境で育つ。現在は夫、子供たちと共に盲導犬パピーウォーカーとして活動中。パピーウォーカーを志願したのは子犬を育てることで社会貢献できるならチャレンジしてみたいと思ったから。3年が経ち、現在3頭目の子犬と暮らしています。その日々の中で犬は私たち人間のかけがえのないパートナーだと実感しています。

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